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FILE 18. Noah & Kaoru Ijima / Photographer / Meguro, Tokyo
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伊島薫/1954年京都生まれ。写真家
鳴き声が聞こえたかと思うと、一匹の犬が部屋に入ってきた。すっと伸びた長い首や脚に、顔から尻尾にかけての流れるような曲線。部屋に入ってきて少し歩くと、床に静かに座り込んだ。ファッションや広告などの分野で活躍する写真家、伊島薫さんの愛犬だ。今から12年前、当時中学生だった息子のためにブリーダーから手にいれた。名前は、ノアという。12歳のオスで、ウィペットという猟犬の一種だ。この犬種はグレイハウンドのミニタイプで、ドッグレースなどでも活躍し運動能力が高い。「息子にウィペットがいいと言われたときは、室内で飼うのは大変じゃないかなと少し心配でした。けれど、ブリーダーから、すごくおとなしくて猫みたいな性格の犬だと説明されて。会ってみたら、一目惚れでしたね」。最初は、事務所でノアを飼いはじめた。仕事が忙しかったので、散歩は事務所のスタッフや息子とみんなで協力して。息子さんが家を出た今では、ノアが一番なついているのは伊島さんだという。取材は、戸越にある伊島さんのスタジオで行われた。「屋上に行こうか」そう言って伊島さんが移動をはじめると、ノアもその後をついてきた。伊島さんが移動するとノアも動く。取材中、何度もそんな場面があった。「ノアは、僕をボスだと思っている。僕がどこかに行こうとすると、必ずついてきます」。伊島さんにとって、ノアがどんな存在なのか聞いてみた。すると、笑いながらこう答えてくれた。「恋人みたいな感じですよ。僕が恋しているというよりも、ノアから一途に惚れられている気がしますね」。ノアは、伊島さん以外の人間にはほとんど興味を示さないのだという。散歩から帰ってくるとスタジオ内は、黄昏色に包まれていた。伊島さんがソファに座ると、寄り添うようにノアもその横に座り込む。その横顔は、とても美しかった。
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